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2012年2月 8日 (水)

トヨタ自動車相談役 「EU債務危機と世界経済展望」

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中川 勝弘 様

通産省審議官を経て、その後「トヨタ自動車取締役副会長」を歴任。

現在 トヨタ自動車取締役 相談役。

国際経済研究所 代表取締役 .理事長

1.当初はユーロ圏内小国の財政問題だった

  欧州債務危機の発端は、ギリシャである。ギリシャ

 は2009年秋の政権交代後に、旧政権が当初3.7%と

・報告していた2009年財政赤字見通しが、実は12%を

 超えることを明らかにした。その後、格付け機関によ

 るギリシャ国債の格下げと、流通市場での国債価格

 の暴落が相次いで、自力での国債発行が不可能とな

 り、201.05月にはユーロ圈各国とIMFから金融支

 援を仰ぐに至った。

  最大の責任は、財政赤字をたれ流し、かつ債務の

 粉飾を行ったギリシャにあることは間違いないが、ユ

 ーロが発足以来、EUが抱えてきた構造的欠陥にも

 原因が認められる。即ち、ギリシャのような放漫財政

 で弱い通貨だった国が、ユーロに参加して為替リスク

 がなくなったことで、外国の銀行から低金利の金を無

 尽蔵に借りられるようになった。自国通貨がドラクマ

 であれば、財政赤字や経常赤字が続けば、ドラクマ

 の価値が下落して資金の流入にブレーキがかかるも

 のだが、共通通貨ユーロになったことで安全弁がなく

 なってしまったのである。ユーロの導入で通貨がEU

 に統合される一方、財政政策は各国の主権に任せる

 という歪みが、ギリシャ危機で一気に表面化したと見

 ることが出来る。

  同様の問題は、アイルランドやポルトガルなど他の

 ユーロ圈小国にも発生し、アイルランドは201011

 に、ポルトガルは20H5月に、相次いでEUとIMF

 の支援下に入った。しかし、3力国のGDPシェアは

 合計してもユーロ圈全体の6%程度に過ぎず、この時

 点まで、問題はユーロ圈小国の財政危機に限定され

 ていたといえる。

 2.イタリア、スペインヘの拡がり懸念で、一気に問題

 が拡大

  しかし、2011年夏頃から、危機は3カ国からイタリ

 ア・スペインなどの大国にまで拡がるようになり、フラ

 ンスやベルギーなどが巻き込まれる可能性すら出て

 きた。

  イタリアやスペインは、前掲の披支援3力国ほどの

 差し迫った財政赤字問題を抱えていたわけではない

 が、経済規模が大きいため、万が一破綻した場合の

 影響は計り知れないものがあった。そのためEUとし

ては、両国の破綻を未然に回避するためのセーフ

ティネットを早急に構築する必要かおり、20105

3年間の時限措置としてEU・IMFで総額7500

ユーロの支援枠(EFSF等)を設定したほか、2012

7月からは新たに5000債ユーロの枠を備えた常

設支援機構(ESM)の設置も決めた。しかし、イタリ

アやスペインが危機に陥った場合に必要される資

金は最低でも1兆ユーロ以上と見積もられているこ

とから、市場はEUの用意したセーフティネットを+

分とは見ておらず、両国の国債価格の下落(利回り

の上昇)もあり、不安定な状況にある。

 なお財政危機国が拡がっていけば、EUの銀行

が保有する各国国債の評価額が下がり、銀行のバ

ランスシートを圧迫することで、金融危機の懸念も

出てきた。さらに各国が成長よりも財政再建を優先

し、さらに銀行が資本増強のために貸しはがしや新

規融資を引き締めていくことにより、実体経済への

マイナスが拡がってきており、EUはマイナス成長に

陥り世界経済にも悪影響を与えるようになった。ユ

ーロ圈小国の財政問題が、ユーロ圈全体あるいは

EU・世界を巻き込んだ、広域かつ複合的な経済危

機になってきたともいえる。

3.当面の見通し

 当面、最も注意を要するのはギリシャの動向であ

る。ギリシャは、20105月に決定した1090債ユーロ

の支援だけでは資金繰りが間に合わなくなってお

り、昨年7月のEU首脳会議で追加の支援が合意さ

れた。但し、そのためには、民間金融機関から債務

5割切り捨てを約束させるなど厳しい条件がつけ

られており、条件が達成されないと支援は打ち切り

となって、320目に予定されている国債償還が行

えなくなり、無秩序デフオルトに陥る可能性も高いと

懸念されている。

 現在ギリシャ政府と銀行団の代表が条件を交渉

中だが、仮に条件が合意に達したとしても、ヘッジ

ファンドを含む全ての債権者が追随するかどうかは

微妙と見られており、また支援額の不足が出ている

ため追加融資が必要になるといわれている。

 またこれ.がクリアできたとしても、セーフティネット

の再構築(EFSF・ESMの支抜粋見直い、ポルト

ガルヘの追加支援問題、民間銀行の資本増強な

ど、2012年中に取り組まなければならない課題は目

白押しである。

4.日本にとっての影響

日本の銀行が所有するギリシャなどの問題国の国際額は

少ないので、債務切り捨てに伴う直接的損失は限定的と

思われる。しかし、欧州危機により世界経済の低迷が長期化

することにより、日本の輸出企業が大きな痛手を被るのは間違いないし、

また通貨ユーロの信認が下落していくことでさらに円高が加速される

ために、日本経済に与えるマイナスの影響は大きいといえる。

                       (完)

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難解な欧州経済を、歴史的考察から明快に解析していただきました。

この時点で、ギリシャのデフォルトは、ない! 

だろう、と予見されました。

しかし、大きな諸問題が山積しているので、

2012年中に取り組まなければならない課題は目

白押しである。

と、結ばれました。

中川先生、本当にありがとうございました。

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